活動レポート

有機EL研究所と慶応大学先端生命科学研究所を視察しました。

2010年5月14日

川崎市として新たに殿町3丁目地区に先端医療再生センターを立ち上げることに伴い、早期に取り組んでいる鶴岡市の事例を視察し、地方自治体として先端研究開発事業に取り組む状況、成果、課題を明らかにして、川崎市の施策展開に対して生かすことを目的に、山形市、米沢市、鶴岡市を視察しました。

山形県レクチャー 有機エレクトロニクス事業について

山形県が、有機エレクトロニクス研究所を立ち上げ、山形大学の城戸教授を所長に迎え、産業おこしとして取り組んできた。

平成15年からの7年間の事業の研究成果をもとに、産業化に結び付けたいということです。延べ43億円の費用が投じた。

計画期間の7年を経過し、今年の3月で研究事業は終了し、4月以降は、企業・大学が産業化することをサポートする。そのために、(財)山形県産業技術振興機構を通じて、事業化推進センターを立ち上げる予定。2010年度予算では1億3000万円を計上している。

08年に、三菱重工、ローム株式会社、凸版印刷株式会社、三井物産が、有機ELパネル専業合弁会社「ルミオテック株式会社」を設立し、今年2月15日から商業ベースの照明用有機ELパネルのサンプルパネルを出荷している。

照明用途の高性能白色有機ELパネルを開発したということです。用途としては、紫外線が出ないので色あせしないことから、美術館などで使われる。

(質問1)参加企業への負担は?

(回答)県内企業は200万円 県外企業は500万円

(質問2)43億円の投資に対する評価は?今後どう産業化に結び付けるのか?

(回答)評価は難しい。外部評価委員会に検討していただいている。有機EL照明として活用していきたい。

(質問3)今後の産業戦略としては?

(回答)米沢で出来た高性能白色有機ELというものは、照明で初めてのもの。
城戸先生がいて、国の支援をもらいながら進めてきた。
先端有機ELの研究をつなげていきたい。

(質問4)ディスプレイ用の有機ELは、シェアの90%が韓国で占めており、そうした分野への進出は望めない。

照明用としての用途が期待されるが、照明用途としては、明るさも寿命もLEDの進出が著しく、有機ELをどう活用するのか?

(回答)有機ELやさしい光、すみ分けできると考えている。

金属加工と組みわせるなど、地場産業の技術と合わせて活用するなど何とかやっているがこれからの部分が大きい。

地場の特産物とのコラボレーションも検討している。県は、研究まで、あくまでも企業中心の商品開発で、そこに支援したい。
新年度 推進センター関連で1億3千万円予算計上。
県として、商業ベース バックライトパネル世界で初めて先端エレクトロニクス研究蓄積を生かして産業化につなげたい。

(質問5)県庁で使っているか?

(回答)ない。明後日県の出先機関で試作品を展示する。

慶応大学先端生命科学研究所でのレクチャー

鶴岡市では、大学の設置と合わせて慶応大学先端生命科学研究所を立ち上げ、一般会計が600億円の自治体で、この10年間の研究所に対して100億円を越える投資を行っています。それ以外に毎年、山形県と一緒に、7億円の研究費補助を出し続け5年間で35億円にのぼっています。

研究所は、2001年研究所完成し、鶴岡市、山形県、慶応大の3者でメタボローム技術の研究、生命活動を研究しています。

2002年にメタボローム(細胞代謝)成分分析、試料中の数千の物質を一度に分析できる装置を発明。このシステムを活用して多様な研究に活用しているということです。

・バイオマーカーを見つける研究
・急性肝炎になるときに増える物質の研究
・アルツハイマー病の時に変化する物質を分析する研究
・山形の特産物の成分分析で、健康に良い物質を抽出し、風雨などで落ちた果物 を集めて2次利用できることも考えられる。
・クモの糸をバクテリアでつくる研究

大学の助手を高校生に。昨年、高校生19人研究助手に採用している 鶴岡中央高校から今年も11人雇用する予定ですが、当初見込んだ2000人の雇用はいまだにめどが立ちません。また、進出した大手企業も撤退しています。

(質問1)研究には場所を選ぶのか?

(回答)インターネットがあるからどこでもできる。

(質問2)日本と海外との違いは?

(回答)都会に集中しているのは、日本だけ。

長期的な成果を求めている。100%うまくいくわけではない。5年以内うまくいかないから失敗しても、ナイストライかどうか。ベンチャーに出資した会社の資金がパーになるだけ。最初からそんなのにできっこない。面白くやったらいい。失敗したらしたで、納得いくまでやって。もっと分散しているのが本来の姿。自治体が関わってうまくいったという事例にしたい。これが、他の自治体に広がったらいい。長期的に見たら農業とサイエンスしかない。サイエンスで食っているという気概。フロントランナーということ。

今ある競争のルールの中でナンバーワンになるのではなく、自分で新しいフィールドを開拓してみんなが寄ってくるナンバーになる。自治体が絡むのは、目先の成果ではなく長期的な成果を見てくれる。来年、再来年、3年先まで予測しない。

(質問3)アルツハイマー、がん対策、実用化はどのくらいか?

(回答)実用化の定義で、広く一般に普及するには、10年以上、自由診療でお金がかかるがそれでもいいというのであれば、人間ドックなどで5,6年で可能

(質問4)研究開発のあり方について、企業集積を図って研究開発というのが相応しいのか?

(回答)ボストン面白いことやっている人がいっぱいいる。

そういう雰囲気をつくって待つならいいが、10社20社呼んできて、これでやってくれというならやらない。

7、鶴岡市の担当者からの説明

「鶴岡市は富田所長を中心にいかに研究を自由にできるかだけです。」とはなし、「学術研究で地域が成り立っている都市。この研究所が存在することに価値があります。学術・文化で若い人が集まってくるという価値観、教育で若い人たちを育てることに力点を置いています」など、説明されました。

8、笹山県議会議員からの聞き取り

有機ELが、米沢市で、山形県、鶴岡市がバイオ。県議会では、総括的な住民説明を求めている。製品化して地元雇用が見込めるのか?その答えは、製品化とは無関係ということ。
研究所というのは、応用はやるが製品化は別。研究所の責任の範囲ではない。
照明分野について、住民が期待するが、製品化はできない。有機ELは、サミットの会場の明かりに使われた。

当初の試算では、米沢、8000億円 鶴岡市4から5000億 山形県だけでも年3兆円生産力を生み出すと計画されていたが、全くない。

研究開発にお金を出している。どういう成果になるのか出てこない。

その研究に先がないことを証明することも研究。研究分野では、成果が出ないことも到達点。

35億円の基金の運用益を活用しているというが、その内容を示せというと株価に影響があるということで示さない。

先端研、大企業が入ってくるが、成果がどんどん流れていく。 山形県民にどんな利益があるのかわからない。一地方自治体がどこまで支援するべきか。国の責任でやるべき、自治体では限界がある。まず、共同研究に参加の企業が工場、事務所を整備する。県は、企業に呼び掛け、「期待する」だけ。最終的に判断は企業の判断。研究所が企業誘致に結び付くかは未知数。企業経営の範囲で判断される。

鶴岡市では、取り上げているのは、我が党だけ。当時の無理難題聞かなければならないことを指摘すると、市長は、「そんじょそこらの大学とは違う」と開き直るだけ。

9、鶴岡市議団との懇談

鶴岡市は人口14万人の都市で、一般会計は年間600億円ほどと聞きました。この10年間で研究所に対する投資は100億円を超えています。

現在は年間県から4億円、鶴岡市で3億円、合計7億円の補助を行っているそうです。川崎の一般会計の約10分の1ですから、川崎に置き換えると年間30億円の資金援助をおこなっていることになります。

1期目は、先端生命科学の研究と大学院の設置ということで賛成した。しかし、2期目は、過大投資ということで反対した。 しかし、その後も税金の投入は継続される。16億円かけて1棟29室のインキュベート施設をつくる予定。1室75㎡で、約9万円前後です。それは、ランニングコストが治まるぐらいです。

当初言われていた企業が入って2,000人の雇用ができるというふれこみもまったくその目途はないこと、第2期計画については過大投資ではないかなどがあり、予算案に反対をしているそうです。

研究者にとっては、国は研究成果を求めるが、県や鶴岡市は、全く成果を求めないで、支援だけを続けてくれる大事なスポンサーとして位置付けられている。
一方、研究開発への支援の必要性は認めるが、一自治体が行うべきかどうかは別。これらの研究は本来国が支援をおこなうべきものであり、多額の税金を投入して自治体が取り組む必要性、優先性を説明できない。地域経済への波及効果は、未知数で、特定大企業と共同研究によって、研究成果だけが流出するが、可能性があることなどの問題点が指摘されました。

研究所周辺は、都市再生計画が平成16年に認定され、バイオ関連企業研究機関集積地区として位置付けられています。現在は、田んぼです。幹線道路計画では、いつか自分の農地は高く売れるだろうと先行して多額な借金で数千万円の豪華な家を建てたものの、一向に売れる様子はなく、借金の重みで自殺した人が3人もでているという悲惨な話しもうかがいました。罪作りな話です。田んぼとして取引すると、1反300坪で100万円ぐらい。研究用に用地買収すると、630万円と言われている。

10、まとめ

今回の視察を通じて特に印象に残ったのは、

①研究としての評価については別として、産業政策としては、極めてリスクを伴うものであるということです。

「研究として、可能性が全くないことも証明することが研究としては大事ということ(笹山議員)」「5年やって失敗してもナイストライかどうか大事(富田所長)」という発言にも象徴されているように、いくつもの研究の中で、製品化に結び付くのはほんのわずか。有機ELもすぐれた可能性があるとしても、市場との関係で、LEDなどそれを上回る製品の出現で、一気に可能性を奪われる。非常に、ギャンブルに似た面が非常に大きいこと。

その割に、莫大な投資と時間を必要とすることで、一自治体として取り組むには、極めて慎重な検討が必要であるということです。

②研究開発自体に精通した職員が皆無で、事業自体に対する正確な評価も難しいこと。予算執行のあり方として、成果を求めないで補助し続けるということでは、研究者には都合いいが、税金の使い方としては極めて問題。市民への説明責任を果たしていない。

③結果、いずれの事業においても、具体的な雇用拡大、産業振興には全く結び付いていないこと

④一方で、鶴岡市の駅前開発の破たんに象徴されるように、街の疲弊が止まらない状況で、市民生活置き去りの計画になっている。「バイオ栄えて民滅ぶ」状況が生まれているということです。

⑤産業集積と一体の研究開発は、極めて無理があるということ。

有機ELでも、7年かかって、ようやくサンプルパネルの生産が始まった程度であり、進出するかどうかは企業の経営判断との指摘の通りであり、「ボストン面白いことやっている人がいっぱいいる。そういう雰囲気をつくって待つならいいが、10社20社呼んできて、これでやってくれというならやらない」というように、研究開発即産業集積というのは、あまりにも現実を知らない計画ということ

<川崎市としての視察成果の活用について>

当面は、基盤整備等への支援の段階であるが、今後研究等への補助等新たな投資が計画されることが予想される。しかし、こうした投資が、未来産業の育成につながるかどうか未知数であり、産業政策としてはいずれの自治体でも成立していない現状を見れば、厳しく戒めるべきと考える。

いずれにしても、研究に対する自治体の態度、産業政策として位置づけについては、極めて慎重を期すべきと結論付けました。